フランス人と、友情と [そういえば僕は南仏に住んでいたんだっけ]
共に仕事をし、利害関係を共有するプライベートの友人が、親友ということになる。
僕の最新の論文は経済学と教育学に関するものだ。フランスの予算組織法(LOLF)の骨格をなしている指標群についての論考で、大学の業績評価の中でこれらの指標群がどのように運用され予算が決定されるのかを解説している。何故、文学研究者の僕にそんな論文が書けたのかというと、オリビエ・ボワローという大専門家の友人が手取り足取り教えてくれたからである。
社会科学系の業績が欲しいなぁ、と思っていたところ、文学研究者が書く社会科学っぽい論文どころか、本格的な社会科学の論文が出来てしまった。それもそのはず、実質的にはオリビエがいて、僕は彼に教わった通りに書いただけなのだから。
そのオリビエを僕に紹介してくれたのが、盟友ジャン=フィリップである。「ジャン=フィリップの友人だから」という理由だけで、オリビエは何から何まで詳しく教えてくれた。そして彼から貰った情報は、日本でそれを専門に研究している先生から見ても十分に興味深いものであるらしい。とある大学より、この内容に関して論文を書くようにとの依頼が来たのだから。
話は変わるが、我々の一味でもありNHKのフランス語講座でお馴染みのパトリスは、日本の文化には殆ど興味がないのだと言う。そんな彼が日本に住み着いたのは日本人との友人との友情に感銘したからなのだそうだ。「彼らはね、一回信頼関係が出来ると、絶対に裏切らないんだよ」とパトリスは言う。
同様に、フランス人は概して友達になるのは難しいが、一回友達になると極めて濃い関係を築くことが出来る、と僕は感じる。
パーティなどで楽しくおしゃべりする程度の知り合いであるなら、ちょっとした愛嬌さえあれば容易く作ることができるだろう。ましてや可愛らしい女性であれば、ナンパ目的の男どもがわんさと群がる。ただ、それだけで友だちかというと...まぁ、それだけの友だちと言えばそうかも知れないが。問題は、その先、と思う。
フランスから帰ったばかりで仕事探しに行き詰まっていた頃、在日フランス大使館に問い合わせてみれば、とフランス人の友人にアドバイスを受けたことがある。が、官庁の強いフランスならともかく日本ではそう簡単にことは進まない。実際、大使館に勤める知人は「もし興味深い仕事の情報があったら日本人職員の大半はみんな退職してそっちの仕事に移るだろう」と言っていた。
そんな話をある時、ジャン=フィリップにした時のこと、「自分はしっかり仕事がありながら、別の仕事の口を友達に紹介しないで自分で取ってしまうなんてやつは友達なんかじゃない!」と怒り出してしまった。いや、彼女は何もそんなつもりで言ったんじゃない、と弁明しようとするも「そんな不愉快なやつは話題に出すな」と一向に聞く耳を持たない。彼はここまで怒るともうつけるクスリがない。
実のところ、ジャン=フィリップと一緒にいる時は、彼の専門の経済学の話は殆ど出ない。飲んだくれながら、馬鹿な話ばかりしている。何か経済の質問をしても彼自身は殆ど答えない。ただ後で、こんな論文があるよ、と教えてくれたり、オリビエのような友人を紹介してくれたりする。
ジャン=フィリップにしたところでオリビエにしたところで、公の肩書きを持っている以上、こちらが身分を明らかにして取材を申し込めば、会って話はしてくれるだろう。ただ、そういう公の立場の人間に質問して返ってくる回答と、友人として得られる情報ではまったく質が異なるのだ。一緒に飲んだくれて馬鹿な話を出来る仲じゃないと入ってこない情報があるということだ。
つまりフランスとは、一定の友情関係が築けなければまともにビジネスが進んではいかない国だとも言える。
オリビエもジャン=フィリップも、それからパトリスも、同じ組織に勤めているわけではないので同僚ではない。でも、貴重なビジネスパートナーであるし、何よりも大切な友人なのである。
ただ、ジャン=フィリップは好き嫌いが激しくて、一回ダメになったら取りつく島もない。まぁ、僕もそうだから人のことは言えないんだけど。
僕の最新の論文は経済学と教育学に関するものだ。フランスの予算組織法(LOLF)の骨格をなしている指標群についての論考で、大学の業績評価の中でこれらの指標群がどのように運用され予算が決定されるのかを解説している。何故、文学研究者の僕にそんな論文が書けたのかというと、オリビエ・ボワローという大専門家の友人が手取り足取り教えてくれたからである。
社会科学系の業績が欲しいなぁ、と思っていたところ、文学研究者が書く社会科学っぽい論文どころか、本格的な社会科学の論文が出来てしまった。それもそのはず、実質的にはオリビエがいて、僕は彼に教わった通りに書いただけなのだから。
そのオリビエを僕に紹介してくれたのが、盟友ジャン=フィリップである。「ジャン=フィリップの友人だから」という理由だけで、オリビエは何から何まで詳しく教えてくれた。そして彼から貰った情報は、日本でそれを専門に研究している先生から見ても十分に興味深いものであるらしい。とある大学より、この内容に関して論文を書くようにとの依頼が来たのだから。
話は変わるが、我々の一味でもありNHKのフランス語講座でお馴染みのパトリスは、日本の文化には殆ど興味がないのだと言う。そんな彼が日本に住み着いたのは日本人との友人との友情に感銘したからなのだそうだ。「彼らはね、一回信頼関係が出来ると、絶対に裏切らないんだよ」とパトリスは言う。
同様に、フランス人は概して友達になるのは難しいが、一回友達になると極めて濃い関係を築くことが出来る、と僕は感じる。
パーティなどで楽しくおしゃべりする程度の知り合いであるなら、ちょっとした愛嬌さえあれば容易く作ることができるだろう。ましてや可愛らしい女性であれば、ナンパ目的の男どもがわんさと群がる。ただ、それだけで友だちかというと...まぁ、それだけの友だちと言えばそうかも知れないが。問題は、その先、と思う。
フランスから帰ったばかりで仕事探しに行き詰まっていた頃、在日フランス大使館に問い合わせてみれば、とフランス人の友人にアドバイスを受けたことがある。が、官庁の強いフランスならともかく日本ではそう簡単にことは進まない。実際、大使館に勤める知人は「もし興味深い仕事の情報があったら日本人職員の大半はみんな退職してそっちの仕事に移るだろう」と言っていた。
そんな話をある時、ジャン=フィリップにした時のこと、「自分はしっかり仕事がありながら、別の仕事の口を友達に紹介しないで自分で取ってしまうなんてやつは友達なんかじゃない!」と怒り出してしまった。いや、彼女は何もそんなつもりで言ったんじゃない、と弁明しようとするも「そんな不愉快なやつは話題に出すな」と一向に聞く耳を持たない。彼はここまで怒るともうつけるクスリがない。
実のところ、ジャン=フィリップと一緒にいる時は、彼の専門の経済学の話は殆ど出ない。飲んだくれながら、馬鹿な話ばかりしている。何か経済の質問をしても彼自身は殆ど答えない。ただ後で、こんな論文があるよ、と教えてくれたり、オリビエのような友人を紹介してくれたりする。
ジャン=フィリップにしたところでオリビエにしたところで、公の肩書きを持っている以上、こちらが身分を明らかにして取材を申し込めば、会って話はしてくれるだろう。ただ、そういう公の立場の人間に質問して返ってくる回答と、友人として得られる情報ではまったく質が異なるのだ。一緒に飲んだくれて馬鹿な話を出来る仲じゃないと入ってこない情報があるということだ。
つまりフランスとは、一定の友情関係が築けなければまともにビジネスが進んではいかない国だとも言える。
オリビエもジャン=フィリップも、それからパトリスも、同じ組織に勤めているわけではないので同僚ではない。でも、貴重なビジネスパートナーであるし、何よりも大切な友人なのである。
ただ、ジャン=フィリップは好き嫌いが激しくて、一回ダメになったら取りつく島もない。まぁ、僕もそうだから人のことは言えないんだけど。
2009-02-05 00:00
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いいお友だちがいらっしゃる。
なかなか濃い関係だなあと思います。
これはうらやましい。
本題とは関係ないところから友達になって、ビジネスや仕事でつながったり…というよりも、
ビジネスで知り合ってプライベートでも友達になるってケースのほうが、
私個人では多かったりします…
by yokonozo (2009-02-05 17:01)
ちょっと自慢がしたくなって、こんな記事書いてしまいました。
とは言っても、何かあればバッサリ切られるんでしょうけど。それは日々注意しているので、なかなか緊張感のある付き合いとも言えます。
フランスではまずビジネスから入ることはないような気がします。ことの発端はMagmaのギタリストのジェイムズでした。
by 黒木 (2009-02-05 17:23)