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ブルターニュ紀行1/人と動物 [そういえば僕は南仏に住んでいたんだっけ]

 ジャン=フィリップのおかげで、ブルターニュに行ってきた。

 ところで、いつの間にやらジャン=フィリップは僕がブログをやっているのを知っている。そして「トモオキがブログに今回のブルターニュ滞在について何て書くか楽しみだな。まぁ、オレは読めないのだけど」などと言う。どこから漏れたのだろうか?さんざんお世話になった以上、書かないわけにはいかないし、ブツブツ...

  今回は、Rostrenenを中心に内陸部をかなり回った。正直、「かなりど田舎だな」という印象を持った。主要産業は農業、それも畜産である。特に豚は人の数より多いのだそうだ。人々は動物とともに暮らしている。人は動物を必要としてきたし、動物も人を必要としてきた、と友人のオリエは言う。

 日本で動物の権利論をやっている友人のことを思った。

  フランスの場合、ドアを開けたら直ぐに家の中である。玄関で靴を脱ぐというようなことはなく、日本でいう「土間」が一階のすべてを占め、そこは既に生活空間なのだ。

  ブルターニュを代表するラジオ局RKBのアナウンサー、ジャン=ピエールのうちにいくと、犬が4匹駆けてくる。彼らは人間の行くところ、どこでも出入り自由だ。テーブルに座ってご飯を食べていると、股の間からひょっこり顔を出し、何かをくれと催促する。グラムシ研究者にしてペット・トレーナーの川上さんが聞いたら、泣いて喜びそうな環境だ。

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 だからと言って彼らが動物愛護者というわけでは断じてない。かつては農業を営んでいたジャン=ピエールは今でも大きな牧場を持っていて、「今は別に金儲けのわけにやっているわけじゃないんだけどね」と言いながら、牛や馬を飼っている。そしてその牛の殆どは屠殺され人間に食べられる運命にあるのだ。

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 口にするのは肉だけではない。動物達の乳も、そのままであるいはバターやチーズに形を変えて大量に消費されている。南仏のオリーヴオイルをベースにした料理に親しんでいる僕としては、大量の肉料理もともかく、そのソースに使われるバターにウッとなる。困ったことにブルターニュのバターはおいしいのだ。

  ミュージシャンのマルト・ヴァサロは菜食者と聞いていたので、彼女と一緒いればさっぱりしたものを食べられると期待していた。ところが、彼女は肉は口にしないものの、朝からすごい量のチーズを口に運ぶ。チーズは決して嫌いではないのだが、連日の酒と肉食文化でやられている僕は、マルトの食べっぷりを見て、何故だかチーズを口にする勇気を無くしてしまった。

  マルトは、他の地域ではオリーヴとか向日葵とか油が大量にとれる作物があるかもしれないけど、ここブルターニュではそのような植物は採れないのよ、と言う。油を取るために次から次へと動物を殺すわけにはいかないでしょ、だったら動物の乳から油分を取るしか無いのね、と続ける。

 驚いたのが、最後にお世話になったオリエのうちである。基本的には菜食者である彼の家では一切乳製品を使わないのである。奥さんが菜食者ではないので家庭単位では多少の肉は消費するものの、ブルターニュ料理に欠かせないクリームの類がすべて植物性なのである。しかも有機栽培以外のものは絶対に使わない。

 かつて、彼の息子は耳の病気に悩まされていたのだそうだ。ところが、乳製品をやめた途端に良くなったと言う。子供たちの将来の健康は親の責任だろ、と彼は結んだ。東京で会った時は、他のミュージシャン仲間と酒を飲んで馬鹿騒ぎしていただけだったが、いざ膝を突き合わせて話してみると、しっかりとした考えを持った教養人であることが分かり、嬉しくなってしまった。

 環境倫理学を専門とする友人が言うように、むやみに動物の命を奪うのは好ましくないことだし、また、肉の消費量を減らすことは環境への負荷を考えても必要なことだとは思う。しかし、長い間、動物と共存し、そしてタンパク源として動物に頼ってきたブルターニュの文化を考えると、動物の権利論の正義の道は、たとえその要求が必要なものだとしても、簡単ではないなぁ、と思った。

 


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yokonozo

絵になりますね。これは。
どこにいっても同じような風景とか町並みしかない日本とは大違いだ。

ワタシもアレルギーがあるので、乳製品を原則食べては「いけない」のですが、
医者が「食べなくても生きられる。和食にすればいいでしょう」と、
さらっと言ってのけたんですわ。
ああそうだ。昔は今みたいにバリバリ肉や乳製品とってなかったっけ。
カルシウムなら別のものからとれたんだっけ、とか思いました。
ちなみに日本人の消化酵素は、
乳製品を完全に消化吸収できるだけの力がないとか研究者からきいたことがあります。
by yokonozo (2009-09-09 09:38) 

黒木

xml_xslさま、

ナイス、有難うございます。

yokonozoさま、

ブルターニュはブルターニュ独自の文化を持っていて、フランスではないと思いました。家も気候にあった独特の作りをしています。

別の友人の息子もアレルギーがひどくて食べられるものがほとんどないと言っていました。
by 黒木 (2009-09-10 08:11) 

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