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松浦さんのゾラ論@Web Tokai第六回 [文学について]

某大学出版局から出版予定の「モダン時代における人間観」予告連載第六弾は私の友人でもあり先輩である松浦寛氏のゾラ論である。

http://www.press.tokai.ac.jp/webtokai/Ningen_06.pdf

田上さんから「人間論の共著を出さないか」と持ちかけられ、仏文から3人立てて欲しいと言われたとき、私の頭に即座に浮かんだ作家は、ゾラ、サルトルとロブ=グリエであった。

国文学の編者の助川さんは、ボードレールの人間観などあったら面白そうですね、とおっしゃっていたが、即、却下した。何故なら、ボードレールで一章設けるとなると、阿部良雄氏に直接教えを受けたこの私が書かざるを得なくなるわけだが、その私に書く気が更々ないからである。

また、ボードレールはもとより、私が博士論文の主題にした詩人であるマラルメにおける人間観を書くというのもしんどい話である。それを書くとなれば、現在フランスでマラルメ研究の第一人者とされているベルトラン・マルシャル氏の博論に楯突くような論考を書くことは必至であり、ただでさえマラルメ研究者に嫌われているのに、これ以上傷口は拡げたくないと思うのである。

田上さんから話を持ちかけられたとき、サルトルとカミュの論争についてやりたいと思った。実は、私の卒論のテーマがサルトル/カミュ論争だったのだ。そして何よりも私のマラルメ研究はサルトルのマラルメ論から入っている。

マラルメは「神の死」を体験した詩人である。そして「人間の時代の文学」を模索したというのがベルトラン・マルシャル氏の博論のテーマである。で、サルトルはと言えば、その人間の絶頂を体現した作家であり、またその死を予感していた作家と言えよう。

そのサルトルの「人間」と言えば、「知識人」としての活動(=アンガージュマン)の中にその理想の姿を垣間みたことは良く知られている通りである。そしてマラルメと同じ時代に「知識人」として活動を開始したのがゾラなのだ。

というわけで、ゾラの章がどうしても欲しかったわけだが、なかなか執筆者探しに苦労した。意外なことにゾラの専門家というのが多くはないし、更に、このテーマで書ける人となると適当な人物が見つからなかったのである。

困った挙げ句、松浦さんに相談してみた。松浦さんはドリュ・ラ=ロシェルやベルナノスなどにおける反ユダヤ主義をテーマに研究を続けている人で、その絡みであの小林よりのり氏に「インチキ学者」呼ばわりされという大変名誉な経験をお持ちの方なのだ。最初は誰か紹介して頂こうと思っていたのだが、話していて実は松浦さんに書いて頂くのが一番早いという結論に達した。

実際、その期待を裏切らない素晴らしい論考を書いて頂いた。


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コメント 7

yokonozo

読んできました。
デパートが舞台で、こんなにドロドロな小説があったんですね!
いまの時代では、確かにセクハラとして糾弾されるでしょうけど、
まだまだ影にかくれてこんな話が転がっていると思います。
じゅうぶん今の時代にも通用するお話ですねー。
(昼ドラとかに使えそうです…)

それにしてもゾラの反論は、すばらしいですね。
スジが通っていてうっとりします。

>あの小林よりのり氏に「インチキ学者」呼ばわりされという大変名誉な経験をお持ちの方

そうだったんですか。それは名誉なこと。
大嫌いな小林よしのりですが、読むのがバカバカしくなってきたので、
ここ数年チェックすらしなくなっていました。
by yokonozo (2008-02-13 11:33) 

黒木

ありがとう御座います。

ゾラの場合、文学というよりジャーナリスティックの香りが強い気がします。
by 黒木 (2008-02-13 21:06) 

yokonozo

ジャーナリステイック。確かにそうですね。
しかし小説として立派に成立していますから、
フツーに読んでいるだけでは、ともすれば非常におもしろい小説として読んでしまいそうです。
(昨日の夜、実家に行ってゾラを引っ張り出して読んでしまいました)
by yokonozo (2008-02-14 08:45) 

黒木

時代的に小説が完成しつつある時でした。

元々、小説は文学ではなくジャーナリスティックでした。だからゾラがジャーナリスティックなのは自然なことなのです。

ですが、ゾラが偉いのは、自らがジャーナリスティックなことを逆手に取って、実にそこにこそ文学が扱わなければならないテーマがあるとしたことでした。
by 黒木 (2008-02-14 11:30) 

黒木

はっこうさん、ありがとう御座いました
by 黒木 (2008-02-14 12:18) 

黒木

xml_xslさん、ありがとう御座いました
by 黒木 (2008-02-15 08:42) 

黒木

papaさん、ありがとう御座いました
by 黒木 (2008-02-28 21:52) 

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