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6月 [散文詩]

風が吹いている。湿った風だ。

幼い頃、この季節があまり好きではなかった。せっかくの誕生月なのに外で遊べない、という単純な理由だった。実際、じとじとと小雨の続くこの季節、一体、誰が好きなものか。

満開の紫陽花が、ひたすら、雨に打たれている、そんな光景を美しいと思い始めたのはだいたい何時の頃からだったのだろう。そんな僕は確実に梅雨を嫌いではなくなっていた。

新学期の緊張感はとうに消え失せ、凡庸さが支配する日々、雑務がたてこみ、溜まってくる疲れが意識上に浮き彫りにされる季節、それでも僕は梅雨が嫌いになれない。

盛夏を前にして、都会の木々が新緑を吹き出そうと、身構えている季節でもある。霧雨くらいなら、むしろ、傘をささずに街を歩きたい。植物達のように、大気から水分を十分補給するべく。ただし、霧雨は、意外と、濡れる。

この時期は、多少の無理をしても何とか乗り切れる。不思議と前向きな季節だ。

そして夏が来る。それまでの細かい雨とは打って変わって、大粒の雨、雷鳴、夕立!夏が来るのだ。

重なる疲労で、吐き出しそうに、夏が来るのだ。 


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